エステ・マッサージサロンの火災事例

エステ・マッサージサロンの火災事例

ヘッドライフ通信をお読みいただき誠にありがとうございます。

ヘッドマッサージ講座・資格スクール代表の江口です。

 

アロマオイルを代表とするサロンで使用するマッサージオイルは、施術に欠かせない存在ですが、その一方で火災の原因になることがあるのをご存じでしょうか。

 

実際に、オイルが染み込んだタオルを洗濯・乾燥後に重ねて放置したことで自然発火し、サロン全焼やボヤ騒ぎに至った事例が全国で報告されています。

 

本ブログでは、エステ・マッサージサロンの火災事例をご紹介するとともに、専門家による検証結果を交えながら、サロン経営者・セラピストが押さえておくべきタオルの洗濯・管理方法をまとめました。

 

大切なお店やお客様を守るために、ぜひ最後までご覧ください。

実際にあったエステ・マッサージサロンの火災

 

 以下、実際にあったエステ・マッサージサロンの火災事例です。

 

2009年8月5日(三重県・一般宅:使用者はエステ関係)  

電気洗濯乾燥機で乾燥後、扉を開けた際にタオルが発煙・発火。

アロマオイルが付着したバスタオルを乾燥→放置し、酸化熱で自然発火と推定。

 

2009年12月10日(大阪府・エステサロン)  

ガス衣類乾燥機で洗濯後のタオルを乾燥させたところ、残存オイルが酸化熱で自然発火。

取説には「美容オイル等が付いた衣類は洗濯後でも絶対乾燥しない」と警告記載。

 

2010年4月8日(奈良県・マッサージ店)  

アロマオイルが残ったタオルを乾燥→放置し、酸化発熱で発火。

 

2011年1月17日(東京都・マッサージ店)  

ガス衣類乾燥機使用後、タオルの残存オイルが自然発火し、機器が焼損。

 

2011年4月18日(東京都・エステサロン)  

店舗で使っていたガス衣類乾燥機が焼損。

残留オイルの酸化熱が原因と推定。

 

2013年(岡山県・エステ店)  

バスタオルを乾燥終了後、乾燥機槽内から出火。

残留油分の酸化熱による自然発火とみられる(NITEメールマガジンの事故事例)。

 

年度不詳(東京都の事例)

マッサージ店の使用タオルを洗濯→乾燥→約5時間放置で、タオル中の不飽和脂肪酸が酸化発熱し出火(東京消防庁「身近な危険物」ページの事例)。

 

2023年版・事例1(年次報告/東京都)  

オイルマッサージ店の従業員が使ったタオルを洗濯・乾燥後、洗濯かご内に放置→酸化発熱で出火。

コインランドリー内でタオル約40枚焼損。放置と山積みによる蓄熱が要因。

 

2025年5月(大阪府・マッサージ店)

店でアロマオイルの拭き取りに使用したタオル約30枚をコインランドリーで洗濯→乾燥→約4時間後に発火。

タオルを店の入口近くに重ねておいたところ自然発火した。

 

<セラピスト・サロン経営者様へ>

サロンで使用したオイルが染み込んだタオルは、洗濯や乾燥をしても油分が残る場合があり、積み重ねて放置すると酸化熱による自然発火の危険があるため、必ず十分な洗浄と乾燥後の保管方法に注意してください。

 

東京消防庁|マッサージオイルなどを含んだタオル等が自然発火

サロンの火災例(火事)東京消防庁HPより
サロンの火災例(火事)東京消防庁HPより
サロンの火事(東京消防庁)
サロンの火事(東京消防庁)

 一つ目の記事は、東京消防庁のホームページに掲載されているものです。

 

油の付着したタオル等が自然発火した火災発生状況

平成20年から平成24年の最近5年間で26件の火災が発生しています。

このうち、エステ店からの火災は10件(38.5%)で、全体の4割近くを 占めています。

本年(平成25年)は2月末現在で5件の火災が発生し、全てエステ店から出火しています。

 

エステ店の火災発生状況

最近5年間のエステ店で発生した火災10件の状況をみると、マッサージオイ ルの付着したタオル等を洗濯し、乾燥機で乾燥後に余熱が蓄積された状態で放置 したため、自然発火しています。

本年(平成25年)2月末までに発生した5件のエステ店の火災についても、同様の状況で発 生しています。

 

ここでいう自然発火とは(一例)

自然発火とは、動植物油中に含まれる不飽和脂肪酸が空気中の酸素によって酸化されて発熱し発火することです。

エステサロン等で使用するマッサージオイル には通常、植物油が含まれており、植物油には、オレイン酸基、リノール酸基と いった不飽和脂肪酸が多く含まれています。

 

どのような状態で自然発火するのか

  1. 空気と接触する面積が大きくなっている(油がタオル等にしみ込んでいる)
  2. 温度の高い状態にある(タオル等を乾燥機で乾燥した後)
  3. 放熱の悪い状況にある(乾燥機内に入れたまま、タオル等をたたんで積み上げる、かごに入れる)

火災を防ぐために

乾燥機の取扱上の注意書のとおり、マッサージオイル、動植物油、機械油、ド ライクリーニング油など付着した衣類は、洗濯後でも絶対に乾燥機で乾燥しないようにしましょう。

 

<さらに詳しく>

詳細ページのリンク切れのため、以下よりダウンロードお願いします。

ダウンロード
マッサージオイルがついたタオル等が自然発火|東京消防庁.pdf
PDFファイル 497.9 KB

 

日経新聞|アロマオイル、火災にご注意!酸化して自然発火も

サロンの火災例(火事)日経新聞
サロンの火災例(火事)日経新聞

二つ目の記事は、日経新聞からです。

 

付着衣類、乾燥機に放置すると危険

エステサロンのアロママッサージで使用したタオルや衣類に付いたアロマオイルが酸化によって発熱、自然発火して火災に至るケースが相次いでいる。

 

目立つのは、乾燥機にかけた後で重なった状態で放置し、熱がこもって火が付くケース。

一見したところ火の気がないために危険性の認識も甘くなりがちで、東京消防庁や業界団体が注意を呼びかけている。

 

東京都葛飾区内のエステサロンで閉店後の無人の店内から出火し、火元近くの乾燥機と壁の一部が焼けるボヤが起きた。

「スプリンクラーが作動しなければ燃え広がってもおかしくなかった」と金町消防署の担当者。

同署の調査で、火元は乾燥機前の洗濯かごに山積みになっていたタオルと判明。

 

タオルにはアロママッサージで体に塗るなどしたオイルの成分が付着して残っており、従業員が乾燥機から出して帰宅した後、油の酸化で温度が上昇して約90分後に自然発火していた。

 

2010年1月には豊島区内のエステサロンで、乾燥機内に残したままだったタオルから出火、店が全焼するなど5棟100平方メートル以上を焼く火災が起きている。

 

アロマオイルや調理用のオリーブオイルなどに含まれる不飽和脂肪酸は、空気中の酸素と触れて酸化することで発熱、350度前後で発火。

 

乾燥機内に放置したり、山積みにしたりすると熱が外部に逃げにくく、アロマオイルを大量に使用するエステなどでは発火の危険が高まる。

 

東京消防庁によると、エステサロンでの同種火災は2006年1月から今年(2011年)11月までに管内で11件発生。

 

日本エステティック協会(東京・千代田)は同庁から協力要請を受け、会報などで

「乾燥後は必ず取り出す」

「かごや袋に詰め込んで放置しない」

といった対策の周知に努めている。

 

消防関係者は「調理師のエプロンや自動車整備の作業着なども、付着した油が自然発火する危険性がある」と指摘。

 

無人の状態で出火すると大きな火災につながりかねない。油の特性を理解し事前予防を心掛けてほしい」と呼びかけている。

 

TBSニース|「家庭でも起こりうる」熱がこもる夏は要注意【ひるおび】

タオルが洗濯後に“自然発火” 専門家「家庭でも起こりうる」熱がこもる夏は要注意【ひるおび】
タオルが洗濯後に“自然発火” 専門家「家庭でも起こりうる」熱がこもる夏は要注意【ひるおび】

 

2025年5月、大阪市中央区のマッサージ店で深夜に火災が発生し、けが人はなかったものの店舗は全焼しました。

原因は、アロマオイルを拭き取ったタオルの自然発火とされています。

 

前日に約30枚のタオルをコインランドリーで洗濯・乾燥後、店内に積み重ねて置いたところ、数時間後に出火しました。

 

NITEの実験でも、オイルを含むタオルは乾燥機の高温環境で酸化反応により煙を発し、やがて燃え上がる様子が確認されています。

 

これはオイルに含まれる不飽和脂肪酸が酸素と反応し発熱する性質によるもので、重ね置きでも内部に熱がこもり発火の恐れがあります。

 

専門家は、家庭でも同様の危険があり、洗濯や乾燥後に油分が少しでも残れば酸化熱が蓄積して出火する可能性があると警告しています。

 

アロマオイルだけでなく、植物油・床用ワックス・サラダ油なども同様のリスクを持つとされています。

 

TBSニュースDIG:タオルが洗濯後に“自然発火” 専門家「家庭でも起こりうる」熱がこもる夏は要注意【ひるおび】2025年7月11日(金)

 

自然発火したタオル等に含まれる油脂の特定に関する検証|東京消防庁

自然発火したタオル等に含まれる油脂の特定に関する検証|東京消防庁HP
自然発火したタオル等に含まれる油脂の特定に関する検証|東京消防庁HP

この資料は、「タオルにしみた油がなぜ自然に燃えるのか」「その油が何だったのかをどう見分けるか」を調べた研究です。

 

火災鑑定の検証の中で、市販の マッサージオイルが試料として扱われており、その主成分がブドウ種子油やホホバ油であることが示され、自然発火の原因となり得る油脂の一例として取り上げられています。

 

 

これまで、油の“成分があるか”は分かっても、「それがどの油(例:アマニ油、ホホバ油、ブドウ種子油など)か」までは特定しづらいという弱点がありました。

 

この研究では、液体クロマトグラフィー(LC)という分析で、油を丸ごと“指紋”のような波形(クロマトグラム)にして見比べる方法を試みています。

 

28種類の油で“指紋カタログ”を作り、実際の火災現場の焼け残りや市販のオイル、混ぜた油、古い油・新しい油、加熱・燃焼後の油でも比べた研究結果です。

 

 

オイルトリートメント後のタオルや衣類の洗濯方法

マッサージタオルや衣類の洗濯方法

 

オイルトリートメント後のタオルや衣類の洗濯方法です。

 

油汚れに強い洗濯していると思いますが、それでもオイルを完全に落とすことは難しいとされています。

 

 

注意ポイント

  • 乾燥機にかけたタオルや衣類を重ねたまま放置すると、内部に熱がこもり発火する危険があります。
  • 本来、オイルが付着したものを乾燥機にかけるのは非常に危険です。
  • どうしても乾燥機を使う場合でも、終了後はすぐに取り出して熱を逃がすことが大切です。

 

安全な洗濯方法

  • 使用後のタオルは、油汚れに強い洗剤を溶かしたバケツに入れておく
  • 40℃程度のお湯でもみ洗いなど、しっかり前処理をする
  • 洗濯機は可能であれば二度洗いする
  • 乾燥機は使わず、自然乾燥を基本とする

サロンの安全とお客様の安心のためにも、日常のタオル管理に十分気を配りましょう。

 

最後に|オイル・クリーム・化粧品は日頃から十分に注意

 

以上が、エステやマッサージサロンで実際に起きた火災事例です。

 

ここでご紹介したのは、WEB上で確認できる情報をまとめたものですが、全国的にはまだまだ事例があると考えられます。

 

実際に、私がお会いした京都のセラピストさんも、火災や放水には至らなかったものの、乾燥機から煙が出てしまい、お客様全員を避難させた経験があったと伺いました。

 

せっかく念願のサロンを開業しても、火災を起こして多額の負債を抱えてしまっては本末転倒です。

 

そのため当スクールの講座(アロマヘッドセラピーハンドフットなどの講座)では、オイルやクリームを使用する際のタオルの洗濯方法や火災リスクについてもお伝えしています。

 

「自宅サロンを始めたのに、自宅が火事で燃えてしまった」

 

そんな悲しいことが起きないよう、ぜひ日頃から十分に注意してください。

 

また、街中で配布される化粧品サンプルをポケットに入れたまま洗濯し、乾燥機までかけてしまうと大変危険です。

 

小さな油分や化粧品の残りでも火災の原因になることがありますので、くれぐれもご注意ください。

 

作成日:2021年12月01日

更新日:2025年09月08日


ヘッドライフ江口

この記事の執筆者

江口征次  

 

インスタグラム大阪会場

 

ドライヘッドスパ・ヘッドマッサージの専門家

Head Life(ヘッドライフ)代表

一般社団法人日本ヘッドセラピスト認定協会 理事長

株式会社ヘッドクリック 代表取締役  

頭ほぐし専門店atama代表

ヘッドスパ専門店atama代表

 

【商品】

・日本初、ヘッドマッサージ施術用枕の販売

・日本初、業務用ヘッドマッサージオイルの販売

 

【登録商標】

・頭ほぐし専門店atama 登録5576269

・頭ほぐし整体院 登録5977517

・骨相セラピー 登録5790990

 

ドライヘッドスパ・ヘッドマッサージの専門家として、2010年よりヘッドセラピスト養成講座を開始し、日本全国、海外からも受講がある人気ヘッドマッサージ資格講座を主催している。